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高頭 伴與

-Tomoyo Takatoh-
人物近影


 私が子供の頃、暮らしの中の知らない事があると、祖母や母に尋ねました。すると2人は、いろいろな知恵も持っていて、子・孫である私にそのつど何かと教えてくれました。1つ1つは、日常のささいなことなのですが、暮らしを営む上で必要なことばかりで、とても役に立ちました。
 そういった日本人の生き方・それぞれの生活文化が発生した経緯・変遷をお伝えする「講座」と「ワークショップ」を組み合わせてお伝えしています。


豊かな心をはぐくみ、潤いある生活を


 文化というのは調べていくと古事記が書かれた飛鳥・奈良時代ごろから脈々と形成されてきたものですが、それをきちんと形式化し、後世に継承していこうという流れになったのは江戸時代の家元制度が生まれてからです。馬術の小笠原流や、折形の伊勢流などですね。貴族社会で地位を向上させようとした武家たちが公家の礼法に対抗して独自に定めた武家礼法を定めたのが始まりです。当時は礼儀作法や文化などを学ぶことによって、武家は一目置かれ、それを指導する文化人は職として生活を安定させることが出来ました。
 そのように日本の生活に強く密接していた伝統文化を改めて普及するために、講演会を行ったり、企業の社員研修などにお伺いしたりしています。失われつつある伝統文化の奥深さ、貴重さ、そしてその技がつくり出す美を体験することで、ひとびとの情操を高めるお手伝いをしたいと思っています。

伝統文化と自然環境の結びつき


 神仏習合の日本において、同時に植物信仰もあったのです。それは神様に安寧のお祈りをするときや、豊作などの感謝を伝えるときに、神仏の依り代として、お正月には竹で作られた門松を飾るのもそうですし、春ごろには桜の木の下でお花見をするのもそうです。昔から私たちの生活にとって大自然は欠かすことができない存在です。
 また、伝統文化の1つである茶道の中にも「お茶花」という床の中心に花を飾り楽しむ場面があります。茶室や茶道具などすべて文化が発展していく中で生まれた人工物に囲まれている茶道ですが、親しい友が佳き日に集い語らう場に、大自然がつくり出した、花という完成美を介してひと時を共にする。そして、儚げな命の輝きと向き合い愛おしむ。茶人達の感性の裕さ、高さが伺えると共に、先ほど述べた植物信仰に通じる心を垣間見ることができます。

環境という土壌の中で活きてくる文化をめざして


 「文化」と「環境」は、一見すると接点の無いような2つです。私自身、おだわら環境志民ネットワークを知るまでは、そう思っておりましたが、耕作放棄地などへ実際に足を運んでみたり、小田原市に残されている豊かな自然に触れてみたりするようになって、考えるようになりました。「環境」という大きな言葉で捉えてしまうと見えてこないものも、生け花に使うお花や、染め物に使う植物のこと、また、それらを育てる人たちのことなど、1つ1つに焦点を当てていくと不思議と繋がっていくものがあります。
 この城下町小田原から、自然環境を織り交ぜた伝統文化を素敵に発信していきたいと思います。