滝田 叔歳
-Yoshitoshi Takida-
人物近影
人物紹介
おだわら環境志民ネットワークとのつながり
FMおだわらで「おだわらDIVING日和」というコーナー担当をしておりまして、おだわら環境志民ネットワークは鈴木副会長にお声掛けいただいたのがキッカケです。小田原のような海辺の街の人たちにとって、海は身近な存在で、そこにあるのが当たり前過ぎてしまうのか、自分のところの海がどうなっているのか知らなかったり、マリンスポーツもしないという人が多いんですね。
他所から来る人は小田原の海に憧れて遊びに来たり引っ越してきたりするので、釣りとかカヤックとかを楽しむのですが、地元の人はその楽しさを知らないんです。おそらく「食べる海」としてかまぼこの材料とか、アジとかブリが獲れるという食としての認知はあると思いますが、「見る海」という意識はまだまだ低いと思うので、素晴らしい海のことを紹介しようとラジオで喋っていたところ、おだわら環境志民ネットワークが立ち上がる際に海からのアプローチ側としてご縁をいただき今に至っています。
魅力がいっぱい、小田原の海
小田原の海の魅力というのはまず第一にアクセスが良いことだと思います。東京から車で1時間で来れる距離かつ自然環境が整っている海というのはなかなかに類を見ません。世界的な話になりますが、ニューヨークやロンドン、パリなど東京と並ぶ世界的都市の人がダイビングをやろうとすると飛行機乗ったり車で何時間もかけて海を目指す大旅行になってしまうんです。
環境の面で特徴的なのは、相模湾には東伊豆側と三浦半島側とがあることでしょうか。この2つのエリアでは風向きが真逆を向くので、例えば小田原で西風が吹いて穏やかな日は、三浦半島の方は荒れた海になり、逆に小田原は北寄りの風が吹くと波が立つのですが、そういう時は向こうは穏やかな海になります。伊豆半島も含めて1時間程度の移動距離の中でポイントが選べるので、こっちがだめならあっち、というようないつでもどこかしら潜ることができる海であるというのは利点です。
また、あまり知られていませんが、この石橋の海には遺跡が沈んでいます。400年ほど前、江戸城を作る際の石切り場が多く存在し、当時は陸路ではなく海上輸送でした。その石を船に乗せる際に、うっかり落としてしまった石は”落城”をイメージさせるためか、積み直すことなくそのまま海中に残されたと考えていますが、こういった水中遺跡を案内できる海というのも非常に珍しく、比較的浅いところにあるので、ライセンスの要らない体験ダイビングでも見に行くことができます。
ゴミの中をダイビングするのって楽しくないんです
海の中で活動できるのは僕たちダイバーだけなんです。釣りとかヨット、サーフィンなどのマリンスポーツなど水面で遊ぶアクティビティはかなり多いのですが、アンダーウォーターに”潜る”となるとダイビング一択なんです。海の中の環境を整えたり水の中で何か作業ができるのはダイバーしかいないということになります。
僕の仕事はレジャーでインストラクターをやっているので、訪れた人たちを遊びに連れて行くのがメインですが、当然水の中に潜っていくと空き缶など落ちていたりするゴミの問題が目に入ってきます。水の中に沈んでいるゴミはダイバー以外拾えませんので、ビーチクリーンなどの活動を定期的に行っていますし、そういった動きは小田原に限らず全国的にかなり以前からあります。釣り振興会と協力して港に沈んだ釣り具の回収をサポートしたり、海とはちょっと離れますが、芦ノ湖の湖底清掃なども仲間を集めて活動しています。
また、当ダイビングセンターでは「1 Dive 1 Cleanup」というプロジェクトに参加しています。これは“ダイビング中にごみを見かけたら、ひとつでもいいから拾うことを当たり前(マナー)にしよう!”という啓蒙活動で、海辺にゴミ箱が設置してあり、拾ってもらったゴミを入れられようにあります。そうして回収されるゴミは空き缶、ペットボトル、ビニール袋がほとんどを占めています。大雨などが来ると、ゴミもいっぱい流れてきます。浜に打ち上がってくれれば、 【プラごみゼロ チームおだわら】の皆さんをはじめ、一生懸命ビーチクリーン活動をしてくれる方がいますが、一度沈んでしまうと上がってきません。普段のダイビングでもなるべくゴミを拾うようにしていても、正直なところ流れてくるゴミの方が多いです。
小田原の海が抱えるもう一つの問題
ゴミと同じく問題視しているのが”海藻”です。小田原の海は現在、磯焼け状態となっていて、かなり海藻が減っています。原因は、海水温が高いとか、数年前の台風で海藻が抜けてしまってその後成長しないとか、魚が食べてしまう食害など、いろいろと考えられるのですが、複合的な要素が絡まり、当センターを始めた10年前と比べても目に見えて海藻が減っています。
海藻は小さな魚たちの隠れ家です。海藻があれば小さい魚が増える、そしてそれを食べる大きな魚がいるという風に、食物連鎖の土台なのですが、その海藻がなくなってしまったことにより、生態系全体が数年という短いスパンで、かなり大きく変化しています。
海藻の復元についてはなかなか難しく、全国で例がないわけではないのですが、土地によって海流やうねりの入り方など環境が違うので、他所の手法が小田原の海にも適合するかなどは手探りになります。カルシウム分を多くしたテトラポットなど栄養素のあるものを沈めて海藻が反応するのかとか、別の場所に生えている海藻を苗木のように持ってきて定着するのかなど、いろいろなやり方を考えています。試行錯誤ですが、いい結果につながるように今後も活動していきたいと思います。